三日月藩で天心流と深くかかわった一族としてもう一つ、土居家があります。
土居家は、子に恵まれず、三代目順右衛門は、三日月藩藩祖となった「森 長俊」が津山藩にいたころから仕えていた
山田孫兵衛(鷹匠でもある)の二男で土居家を継ぎましたが、やはり子がなく中年でなくなったので、
表の井上家と同じように「今村 又右衛門 一胤」から養子「一純」を貰い家をつなぎます。
「一純」は、その後「土居 金五右衛門 正純」と名乗ります。
ここで
父「今村 又右衛門 一胤」 今村家3代目

長男「今村 又右衛門 一英」今村家4代目
二男「井上 壽之丞 為壽」表の井上家6代目
三男「土居 金五右衛門 正純」土居家4代目

となり、今村家、表の井上家、土居家は、親兄弟の関係で結ばれます。
「土居 金五右衛門 一純」は「井上 壽之丞 為壽」と同じように武術に秀でており、天心流剣術、當用術、竹内流腰之廻を極め、多くの門人を抱えたそうです。
また、當用術は、この「土居 金五右衛門 一純」が工夫を加えて独自の「面」「小手」を作って試合をするようになったそうです。
三日月町史には、これが剣術と捕手の間のような存在と表現していますが、これ以上、詳しいことはわかりません。

また、三日月町史では、一流を創設したとしていますが、天心流も當用術も「土居 金五右衛門」が創流したわけではなかったので、ちょっと意味が分かりませんね。


さて、「金五右衛門 正純」の嫡男「武源 正方」も父に負けない武術家として育ち、「天心流剣術」「當用術」「竹内流腰之廻」だけでなく、特に「石堂竹林流弓術」に秀でた人物でした。
日岡八幡神社には、以前からご紹介している奉納額には、表の井上家、今村家、土居家の人たちの名前が並んでいます。

全員、血のつながりがあるので、まるで「家族集合写真」のようになっていますね。
余談になりますが、その中には、以前ご紹介した「竹田家」の「竹田 新左衛門 椒勝」の名前があります。
竹田家もまた、武人の一家で剣術は「直真影流」槍術は「祭神流」砲術は「荻野流」を極め、特に「祭神流」と「直真影流」は、武者修行の許可を得て地方を巡って試合をした記録も残っています。
三日月藩の武家屋敷公開の折に、この竹田家の所有する巻物が展示されていましたが、バラで十数冊あるのに、それ以外の巻物も山積みで圧巻の一言です。

残念なのは、「天心流剣術」の巻物がなかったこと。竹田家は代々剣術は「直真影流」を学んだようです。

さて、優秀な門人を多く抱えた「土居 武源 正方」でしたが、子に恵まれず、三日月藩の家老「可児家」から養子を貰い、その子は「土居 造酒治越智 通方」と名乗ります。
日岡八幡神社の隣にある「烈祖神社」には、「土居 武源 正方」、「土居 造酒治越智 通方」両名の名前が入った奉納額が掲げられています。

明治6年の士族の土地坪数を調べた記録に「土居 通方」が106坪の土地に住んでいたことが記されており、明治維新後も三日月に住んでいたことが分かります。
しかし、三日月に天心流剣術、及び、當用術は、伝承されていないことが明治38年の烈祖神社奉納額を見ればわかります。


今村家も井上家も天心流剣術を明治維新後も伝えたことは、聞かれないので、兵庫県民としては誠に残念でありますが、「三日月藩伝 天心流剣術」は絶伝したと断言せざるを得ません。

さて、土居家のお話でもう一つしておかなければいけないのが、巌筒男神社の弓術奉納額です。
「土居 造酒治越智 通方」門人。

この中に文字が薄れて見えにくいですが、一番右端の人物は、井上氏からの情報で「中の井上家」の「井上 和造」であろうとのことです。
さらに、宇田(織田)孫太郎という人物は、井上家の遠縁にあたる一族で、井上氏の祖父の代も交流があったようです。
宇田(織田)家は元は織田信長の家系らしいですが、江戸時代は、藩主森家に気を使って宇田家を名乗ったそうです。
この宇田(織田)家には、赤穂義士の大石内蔵助が植えた桜が残っているそうです。また日本地図を作った「伊能忠敬」が文化10年12月25日に宇田(織田)家に宿泊した記録もあるそうで、かなり有力な一族だったようです。
さらに一緒に書かれている春名家は、唯心流柔術の一族で庄屋。江見家も庄屋。
この4家は親戚関係で結ばれており、ともに行動することが多かったそうです。
武士と同等の扱いを受けていた土地の有力者たちが四季の的を狙って打ち、邪を払い豊穣を願ったわけです。

さて、今回の三日月藩の天心流剣術と當用流の話は、これで終わりですが、「国富 忠左衛門」の正体を調べた記事をこの後で公開していこうかなと思っています。
しかし、その前に井上氏から井上家所蔵の「石堂竹林流弓術」の伝書(口伝について書かれたもの)全文を新たに送ってもらったので、ご紹介しようと思います。
井上氏にはこれまでに加え、このような伝書を公開していただき武術家として感謝の言葉もございません。
次回よりありがたく公開させていただきます。
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井上家所蔵 三日月藩伝「石堂竹林流弓術」1

三日月藩の天心流剣術と當用術の話7